ほうれん草は、秋にまいて冬にかけて収穫する、初心者にも育てやすい葉物野菜です。芽が出ないときに、まず疑いたいのが土の酸性です。また、発芽がそろうかどうかが、その後の育ち方を大きく左右します。
この記事では、土づくりから種まき、間引き、収穫まで、秋まきの手順を順番に解説します。芽が出ない・育たないときは、後半の「育たないときの原因チェック」の表で確認できます。
👉 種まきの時期や日数は、中間地(関東〜近畿の平野部など、種袋で「中間地」にあたる地域)の目安です。寒い地域や暖かい地域では、種袋の栽培暦で確認します。
👉 プランターで育てるときは、酸度調整ずみの市販の野菜用培養土を使えば、畑で行う苦土石灰などの土づくりは要りません。記事の後半にある「プランターで育てるとき」へ進んでください(目次から飛べます)。
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ほうれん草栽培|基本情報
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 種まき | 秋まきは9〜10月(中間地) |
| 発芽 | 5〜7日ほど(気温で前後する。適温15〜20℃、25℃以上では発芽しにくい) |
| 日当たり | 日なた |
| 土の酸度 | pH6.3〜7.0(弱酸性〜中性が向く。pH5.5以下の酸性の土は不向き) |
| 株間 | 最終的に5〜6cm(10月まきは3〜5cmと狭め) |
| 収穫 | 草丈20〜25cm(種まきから40〜60日ほど) |
| 連作 | 1〜2年あける |
土づくり|苦土石灰は種まきの2週間以上前に
土の酸度はpHで表します。7が中性で、数字が小さいほど酸性が強くなります。ほうれん草は、pH6.3〜7.0の弱酸性〜中性の土が向いています。pH5.5以下の酸性の土には不向きで、発芽が悪くなったり、芽が出ても葉先が黄色くなったり、本葉2〜3枚で生育が止まったりします。
- ✔ 2週間以上前:苦土石灰(土の酸性を弱める資材)を1㎡あたり100〜150gまき、深く耕す
- ✔ 1週間前:完熟堆肥(1㎡あたり約2kg)と元肥(種まき前に入れる肥料。化成肥料〈N:P:K=8:8:8〉なら1㎡あたり100〜150g)を混ぜて耕し、畝(作物を育てる土の盛り上がり)を作る
- ✔ 水はけの悪い場所は、畝を高くする
苦土石灰は、園芸店やホームセンターで買えます。スギナやハコベが多い畑は酸性が強いことがあり、その場合は150gほどと、やや多めにします。土の酸度は、市販の酸度計などで調べられます。pH6.3に届かなければ、苦土石灰で上げます。市民農園なら、区画に石灰を入れてあるかを管理者に聞いておくと安心です。
今から土づくりを始めるなら、苦土石灰を入れた2週間後ごろが種まきです(その1週間前に堆肥と元肥)。10月中旬を過ぎてから土づくりを始めると、種まきは10月下旬になり、年内の収穫は難しくなります。収穫が遅れても育てるか、石灰の2週間待ちが要らない、プランターと培養土で育てる方法もあります。
👉 元肥に発酵鶏ふんなどの有機質肥料を使うときは、1か月ほど前に入れます。種まきの直前に入れると、タネバエ(種や芽を食べる虫の幼虫)が出やすくなります。
種類の選び方|秋まき向きの品種を選ぶ
- 東洋種:葉先がとがり、切れ込みが多い。日が長くなるととう立ちしやすいので、秋まきに使われる。種にトゲがあるものが多い
- 西洋種:葉先が丸く、葉肉が厚い。とう立ちしにくく、春まき・夏まきに使われる
- 交雑種(F1):両方の特性をあわせた品種。丈夫で病気に強いものが多く、広く出回っている
種袋の裏で、秋まきに向く品種かを確認します。べと病(カビによる葉の病気)が心配なときは、「べと病抵抗性」と書かれた品種を選びます。
種まき|中間地は9〜10月。発芽をそろえるのがコツ
中間地の秋まきは、9〜10月が中心です。年内に収穫するなら、10月中旬までにまきます。11月以降にまくときは、トンネルや不織布のべたがけ(不織布を作物に直接かぶせること)で保温します。寒い地域では、種袋の栽培暦で確認します。
- ✔ まき溝は深さ1cmほどで、底を平らにならす(2列以上なら15cmほど間をあける)
- ✔ 種は1〜2cm間隔でまく(溝にそってまく「すじまき」)
- ✔ 土を1cmほどかぶせて手や板で軽く押さえ、たっぷり水をやる
- ✔ 芽が出るまで(5〜7日ほど)は、土を乾かさない。土をかぶせすぎない
- ✔ 虫が心配なら、防虫ネットをかける(くわしくは下の「病害虫」で)
- ❌ まき溝やかぶせた土がでこぼこのまま(深さがばらつき、発芽もばらばらになる。くぼみに水がたまると苗が立ち枯れしやすい)
まだ暑い9月上旬にまくときは、芽出し(まく前に水を吸わせて芽を出させること)をすると発芽しやすくなります。種袋に「プライミング」などと書かれた発芽処理済みの種は、そのまままきます。
👉 秋の長雨にも注意します。高温で水分の多い状態では、発芽が抑えられます。
間引き|本葉1〜2枚で3cm、3〜4枚で5〜6cmに

間引きは、混み合った株を抜いて、間隔を広げる作業です。子葉(最初に開く2枚の葉)のあとに出る葉を本葉と呼びます。2回に分けて行います。
- ✔ 1回目:本葉1〜2枚のころ、株間3cmほどに
- ✔ 2回目:本葉3〜4枚のころ、株間5〜6cmに(10月まきは3〜5cmと狭め)
- ✔ 育ちの遅い株、葉の形の悪い株、ひょろひょろの株を抜き、葉と葉が重ならない程度にする
10月まきは気温が下がって育ちが遅くなるので、株間を少し狭くすると生育が順調に進みます。ただし、混み合いすぎると湿気がこもり、病気が出やすくなります。間引いた株は、サラダなどに使えます。
水やりと追肥|芽がそろったら水は控えめに
芽がそろうまでは土を湿らせておき、そのあとは回数を減らします。発芽後は、土の表面が乾いてから水をやります。ほうれん草は湿気に弱く、水のやりすぎで根が傷みます。
追肥(育てている途中で足す肥料)は、2回目の間引きのあとに行います。化成肥料〈8:8:8〉を1㎡あたり約50g、列と列の間にまきます。葉に肥料がかからないようにして、土と軽く混ぜます。
収穫|草丈20〜25cmが目安。根元をハサミで切る

草丈が20〜25cmになったものから、順に収穫します。種まきから40〜60日ほどが目安で、まく時期が遅いほど日数がかかります(遅くまくと、60〜80日ほどかかることもあります)。抜くと残った株を傷めやすいので、根元をハサミで切ります。
一度にまくと、収穫どきが重なって遅れがちです。必要な分だけ時期をずらしてまく「段まき」にすると、長く収穫できます。
👉 寒さに当たると、葉が厚くなり、甘みが増します。−10℃にも耐えますが、平均気温が5℃を下回ると生育が止まります。霜や寒風で葉が傷むときは、トンネルやべたがけで守ります。
とう立ち|秋まきは心配が少ない。夜の明かりには注意
ほうれん草は、日が長くなると茎が伸びて花が咲きます(とう立ち)。秋まきは日が短くなる時期に育つので、心配は少なめです。ただし、夜も街灯や家の照明が当たる場所では、とう立ちすることがあります。冬を越して春まで残した株も、とう立ちします。
- ✔ 春まき・夏まきは、とう立ちしにくい性質(晩抽性)の品種を選ぶ
- ❌ 乾燥や肥料切れをそのままにする(とう立ちしやすくなる)
病害虫|病気ではべと病にいちばん気をつける
病気でいちばん気をつけたいのはべと病です。春と秋に被害が多く出ます。虫は、防虫ネットで防ぐのが基本です。
べと病(最優先)
葉に淡い黄色の斑点ができ、裏に灰白色のカビが生えます。葉が黄色くても、裏にカビがなければ、べと病ではなく肥料や土の酸度かもしれません(下の表)。雨が続いて湿気が多いときに出やすく、肥料のやりすぎや密植で増えます。
- ✔ 種袋に「べと病抵抗性」とある品種を選ぶ
- ✔ 畝を高くして水はけをよくし、株間をとって風通しをよくする
- ✔ 見つけたら、早めに被害葉を取り除き、畑に残さず持ち出す
- ✔ 収穫後の株や葉も畑に残さず片づける(残ると次の発生源になる)。同じ場所では、1〜2年あけて育てる
薬は必須ではありません。使うなら、ほうれん草に使えるものを選びます。ほうれん草は、農薬の作物分類で「野菜類」に入ります。Zボルドーは、農林水産省の登録で、野菜類(キャベツを除く)のべと病に使えます。粉末の薬で、水で500倍にうすめ(水1Lに2g)、噴霧器で散布します。使うのは発病前から発病初期(雨が続きそうなときや、斑点が出はじめたごく初期)で、広がった株には向きません。使う前に、袋の「適用作物」「病害虫名」「倍率」「使用時期」「使用回数」を確認します。
500g入りは、広い畑や毎年育てる人向けの量です。数株やプランターなら使い切れないので、無理に買う必要はありません。
そのほか(まず予防)
- 苗立枯病:芽が出てから本葉1〜2枚のころまでに、苗が倒れて枯れます。まき溝や土を平らにして、水がたまらないようにすると、起こりにくくなります
- アブラムシ・ヨトウムシ:防虫ネットでトンネル(支柱にネットをかぶせたもの)をかけると、飛んでくる虫を減らせます。かける前に、葉の裏や土に虫がいないか確かめ、裾やひもに隙間をつくらないようにします
- ネキリムシ:土の中にいて、苗の根元を食べます。堆肥を下のほうに埋めて、まき溝から離すと、被害を減らせます
アブラムシが増えて困るときの選択肢として、ベニカマイルドスプレーがあります。農林水産省の登録で、野菜類のアブラムシ類に収穫前日まで使えます。使い方はラベルに従います。
プランターで育てるとき
プランターは、幅60cmほど、深さ20cm以上のものが目安です。日当たりのよい場所に置きます。底に鉢底石を入れ、市販の野菜用の培養土を入れます。元肥入りの培養土なら、元肥は要りません。酸度を調整してあるかは、袋の「pH調整済み」などの表示で確認します。
まき溝は2列にして、列の間を10〜15cmあけます。まき方や間引きは、畑と同じです。発芽後の水は、土の表面が乾いてから、鉢底から流れ出るまで与えます。追肥の量は、肥料の表示に従います。
👉 プランター栽培の道具の選び方は、家庭菜園の始め方でまとめています。
育たないときの原因チェック
| 症状 | 見直すこと |
|---|---|
| 芽が出ない | 芽が出るまでに土が乾いた、土をかぶせすぎた、25℃以上の暑い時期にまいた、長雨で過湿になった、土の酸度がpH5.5以下。直前に鶏ふんを入れたなら、タネバエの可能性 |
| 芽がそろわない | まき溝やかぶせた土がでこぼこ |
| 葉先が黄色い・本葉が出るころに枯れる・本葉2〜3枚で止まる | 土が酸性(pH5.5以下)の可能性。次の種まきの前に、苦土石灰で酸度を調整する |
| 古い葉から黄色くなる | 肥料(チッソ=窒素)不足の可能性。追肥する。改善しなければ土の酸度も確認 |
| 葉に黄色い斑点、裏にカビ | べと病。被害葉を早めに取り除く |
| 苗が倒れて枯れる | 苗立枯病の可能性。暑い時期の過湿や、水がたまる場所に注意。株元が切られたように倒れ、土の中に虫がいるなら、ネキリムシ |
| ひょろひょろで葉色が薄い | 株間が狭すぎる、肥料不足、暑い時期の水のやりすぎ |
| 茎が伸びて花が咲く | とう立ち。夜も明かりが当たっていないか、品種が時期に合っているか |
やりがちなNG行動
- ❌ 畑で苦土石灰を入れずに種をまく → pH5.5以下の酸性の土だと、発芽が悪くなり、育ちにくくなります
- ❌ 種まきの直前に、発酵鶏ふんを入れる → タネバエが出やすくなります
- ❌ 芽が出る前に土を乾かす → 発芽がばらつきます
- ❌ 芽が出たあとも水をやりすぎる → 根が傷みます
よくある質問
Q. 芽出しは、どうやるのですか?
芽出しの方法の一つは、種を水に一昼夜つけ、水を切って湿った布で包み、ポリ袋に入れて冷蔵庫に置きます。1mmほどの根が1割ほどの種に出たら、まきます。芽出しした種は乾燥に弱いので、芽が出るまで土を乾かさないようにします。涼しくなってからの秋まきなら、芽出しをせずにそのまままけます。
Q. 苦土石灰と堆肥は、同じ日に入れてもいいですか?
同じ日でも入れられます。その場合は、種まきの2週間以上前に、苦土石灰と完熟堆肥をいっしょに入れます。上の「土づくり」の手順のように、苦土石灰を先に、堆肥と元肥を1週間前に分ける方法もあります。どちらでも、苦土石灰は種まきの2週間以上前に入れておきます。
Q. 11月にまいても間に合いますか?
まず、種袋の栽培暦で、最後にまける時期を確認します。中間地の秋まきは9〜10月が中心です。11月以降にまくときは、トンネルや不織布のべたがけで保温します。育つのに時間がかかり、平均気温が5℃を下回ると生育が止まるので、収穫は遅くなります。
🌱 まとめ
- ✔ 中間地の秋まきは9〜10月。苦土石灰は種まきの2週間以上前に入れる
- ✔ まき溝とかぶせる土を平らにして、芽が出るまで乾かさない
- ✔ 芽がそろったら、水は土の表面が乾いてから
- ✔ 2回の間引きで、株間を5〜6cmに広げる(10月まきは3〜5cm)
この4つで、よくあるつまずきを減らせます。
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